「AIDMAって何?」
「AIDMAを活用してみたいけどもう古いの?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか?
『AIDMA(アイドマ)』とは、顧客が商品を知ってから購入するまでのプロセスを表した購買行動モデルのひとつです。
マーケティングに携わる方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれませんね。
最近ではもう古いといわれるAIDMAですが、顧客の購買行動に合わせた適切なマーケティング戦略を立てるのに、今でも有効な手段です。
そこで今回は、AIDMAの基本的な考えを活用事例・メリットと併せて解説したいと思います。
「購買行動モデルを活用して、自社のマーケティング活動を分析したい」
「顧客の心理状態に応じた適切なマーケティング戦略を立てたい」
と考えている方は、ぜひ本記事でAIDMAについて理解を深めておきましょう。
目次
購買行動モデルとは?
AIDMAを理解するためには、そもそも購買行動モデルとは何かを理解する必要があります。
購買行動モデルとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入するまでのプロセスを、モデル化したものです。
突然ですが、あなたがスマートフォンの購入を決めたときのことを、少し思い出してみてください。
購入に至るまでに、さまざまな情報にふれて、気持ちに変化があったり、何かしらの行動を起こしませんでしたか?
たとえば、
- 商品の広告を見て、「このスマートフォンいいかも」と思うようになった
- 検索して出てきた商品の詳細ページを読んで、「これ便利!欲しい」と思うようになった
- 店舗で直接商品を触ってみて、購入を決心した
などです。
私たちが購入までにたどる、このような心理的変化や行動をモデル化したものが、購買行動モデルです。
購買行動モデルには、今回詳しく解説するAIDMA以外にも、AISASやSIPS、RsEsPsなど多くのモデルが存在しています。
AIDMAとは?
AIDMA(アイドマ)とは、顧客の購買行動モデルの一つです。
AIDMAは、1920年代にアメリカの著作家サミュエル・ローランド・ホールによって提唱されました。
以来、約100年にわたってマーケティングで利用されています。
AIDMAモデルでは、顧客がある商品やサービスの存在を知ってから購入に至るまでに、次の5つのフェーズがあります。
- Attention(認知・注意)
- Interest(興味・関心)
- Desire(欲求・渇望)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
5つの英単語の頭文字をとると、『AIDMA』になりますよね?
それではこの5つのフェーズについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
1. Attention(認知・注意)
Attentionは、顧客が商品の存在を認知するフェーズです。
どんなに素晴らしい商品でも、顧客がその商品の存在を知らなければ、購入してもらえません。
顧客が商品を知ってくれてようやく、スタートラインに立てるのです。
そのため、企業はまず第一に顧客の注意をひきつけ、商品を認知してもらう必要があります。
認知度向上のための施策には、たとえば、
- テレビCM
- 新聞広告
- 動画広告
などがあります。
- 顧客の心理状態の変化:知らない →「最近この広告よく見るなぁ。こんな商品があるんだ。」
- 企業の目標:認知度向上
- 方法:テレビCM・新聞広告・バナー広告・動画広告・SEO対策など
2. Interest(興味・関心)
Interestは、顧客が商品やサービスに興味を持つフェーズです。
「こんなものがあるんだ」と顧客に商品を認知してもらっても、そのあと興味を持ってもらえなければ、購入には結びつきません。
このフェーズの顧客に、企業がおこなうべきことは、商品やサービスに関する有益な情報の提供です。
すでに商品のことを認知してくれている顧客に対して、自社商品の魅力を伝え、顧客の興味や評価を育成していく必要があります。
その方法には、たとえば、
- 折込チラシ
- 業界や商品に関するブログ記事
などがあります。
- 顧客の心理状態の変化:知っているけど興味はない →「この商品ちょっといいかも。」
- 企業の目標:商品・サービスへの評価向上
- 方法:折込チラシ・業界や商品に関するブログ記事など
3. Desire(欲求・渇望)
Desireは、顧客に「欲しい」という欲求が芽生えるフェーズです。
この欲求フェーズまで来ると、ゴールである『購入』に大きく近づきます。
では、顧客がある商品を「欲しい」と思うのはどのようなときでしょうか?
それは、商品のメリットや必要性を強く感じたときです。
そのため、企業は顧客に実際に商品を使ってもらうなどして、「この商品が必要だ」と思ってもらわなくてはなりません。
顧客のニーズを喚起する方法には、たとえば、
- 試供品の提供
- 無料トライアルの実施
などがあります。
- 顧客の心理状態の変化:興味はあるが、コストを払ってまで欲しいとは思っていない →「これいい!欲しい!」
- 企業の目標:ニーズ換起
- 方法:試供品・無料トライアルなど
4. Memory(記憶)
Memoryは、顧客が「欲しい」と思っていた商品を思い出すフェーズです。
顧客は、ある商品が「欲しい」と思っても、すぐに購入するとは限りません。
「時間がないから、次の機会に買おう」と購入を先延ばしにしたり、検討を重ねるうちに忘れてしまうことがよくあります。
こういった顧客に対して、企業側は再び商品を思い出してもらえるような施策をおこなう必要があります。
たとえば、
- メルマガ
- ダイレクトメール
- リターゲティング広告
などが顧客の記憶を喚起する方法です。
このような施策により、継続的に顧客をフォローすることで、商品購入に至る可能性を高めることができます。
- 顧客の心理状態の変化:欲しいと思っていたが、購入していない →「この商品やっぱりいいな!買おうかな」
- 企業の目標:記憶の喚起
- 方法:メルマガ・ダイレクトメール・リターゲティング広告など
5. Action(行動)
Actionは、顧客が実際に商品やサービスを購入するフェーズです。
購入を決心した顧客に対して、最後に企業がおこなうべきアプローチは、購入機会の提供です。
顧客が「買おう」と決めたタイミングで、商品がかんたんに手に入るよう、環境を整えておかなくてはなりません。
買うまでにいくつもハードルがあると、せっかく最後のフェーズまできてくれた顧客も離脱してしまう可能性があります。
そのため、
- 店頭
- インターネット
- 通販
などさまざまな購入経路の準備をおすすめします。
- 顧客の心理状態の変化:買う機会がない、決心がつかない →「買おう!」
- 企業の目標:機会提供
- 方法:店頭・インターネット・通販など
AIDMAは古い?
最近では、インターネット上でも「AIDMAはもう古い」という意見が多く見られますね。
本当にAIDMAはもう古いのでしょうか?
結論からいうと、AIDMAはたしかに購買行動モデルとしてはかなり古いものです。
というのも、提唱されてからすでに100年近く経過しているからです。
インターネットの登場により、顧客の購買行動に変化があったのも事実です。
しかし、AIDMAがもう使えないのかというと、それは大きな間違いです。
その理由は、AIDMAが顧客の購買行動の本質を捉えている点にあります。
比較的最近登場した、購買行動モデルのひとつに、AISASがあります。
AISASは、インターネット利用者を顧客として想定したモデルですが、ベースとなったのはAIDMAとされているんですね。
つまり、顧客の購買行動の本質的な部分は、今も変わらないということです。
また、今でもAIDMAの得意なケースが存在しており、実際にマーケティングで利用されています。
住宅・自動車のような、認知してから購入までに何度も検討を繰り返す商品や、店舗で購入する商品には、特にAIDMAが有効だとされているのです。
こういった理由から、AIDMAはまだまだ利用可能ですし、マーケターなら最低限知っておくべきモデルだといえます。
AIDMAの事例 :ドモホルンリンクルのケース
AIDMAの成功事例の一つに、再春館製薬の『ドモホルンリンクル』があります。
ここからは、ある主婦が『ドモホルンリンクル』を購入するまでの流れをAIDMAに沿って見ていきます。
テレビで『ドモホルンリンクル』のCMを目にする。
→「このCMいつも流れているなー。化粧品のCMか。」
折込チラシを目にする。
→「あ、CMのでみたやつ!肌を再生してくれる乳液があるんだ。すごいな。」
無料サンプルがあることを知り、申し込んでみる。
→「無料なら使ってみようかな。」→「これいい!今度買ってみよう。」
ダイレクトメールで、無料サンプルを使用した人向けのキャンペーン情報を得る。
→「今ならお得だし買っちゃおうかな。」
インターネットで簡単に注文できると知る。
→「インターネットで簡単に注文できるし、今買っておこう。」
AIDMAでは、顧客が商品を認知してから購入に至るまでに、おおよそこのようなプロセスを経ています。
AIDMAを活用するメリット
ここからは、AIDMA活用の2つのメリットについて解説します。
- 顧客の心理状態に合わせたマーケティング活動ができる
- 自社の弱みを評価できる
AIDMAのメリット1.
顧客の心理状態に合わせたマーケティング活動ができる
AIDMA活用の大きなメリットのひとつとして、顧客の心理状態に合わせたマーケティング活動ができるという点が挙げられます。
顧客の心理状態は、購買行動のそれぞれのフェーズにおいて、大きく異なっています。
すなわち、企業が提供すべき情報も、顧客がどのフェーズにいるかによって変わってくるということです。
たとえば、商品をまったく知らない顧客に、購入ページのURLを送り続けたとしても効果は期待できませんよね?
AIDMAを活用すれば、このような顧客の心理状態を無視したマーケティング活動を、未然に防ぐことができます。
なぜなら、自社のマーケティング施策が、どの心理状態にいる顧客に向けたものなのか、を可視化できるからです。
顧客の心理状態に応じて適切な情報提供ができれば、顧客自身がみずから納得して購入してくれるような、売れるマーケティングが実現するでしょう。
AIDMAのメリット2.
自社の弱みを評価できる
すでに述べたように、AIDMAの活用は自社のマーケティング施策のポジションを明らかにしてくれます。
結果として、どの段階で顧客を次のステップに繋げられていないかという弱みを評価しやすくなります。
アプリで音楽の配信サービスをおこなう会社を例に、少し考えてみましょう。
アプリを紹介するバナー広告が、かなりクリックされている(つまり興味を持ってもらっている)にもかかわらず、トライアルやサービスへの申込みが極端に少ないとします。
この場合、顧客にサービスの必要性を感じてもらえていない可能性が高いですよね?
したがって、『欲求・渇望』フェーズへのアプローチを改善することで、トライアルやサービスへの申込みを増やせる可能性があることがわかります。
このように、AIDMAを自社のマーケティング活動に当てはめてみることで、何かマーケティングのヒントが得られるかもしれません。
ぜひ以下のAIDMAのテンプレートを利用して、マーケティング戦略の立案や分析をおこなってみてください。
AIDMA以外の購買行動モデル
AISAS(アイサス)
AISASとはインターネットが普及した社会に合わせて提唱された、マーケティングにおける消費者の購買行動をモデル化したものです。
2004年に株式会社電通が提唱したモデルであり商標登録がされています。
AISASは Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(購買)→Share(共有)のそれぞれの頭文字をとったものです。
AIDA(アイダ)
AIDAはAIDMAのMemory(記憶)をとったものです。
アメリカで1920年代に応用心理学の分野の論文でE・K・ストロングが示したものとされています。
日本ではAIDMAを利用されることが多いのですが、欧米のセールスやマーケティングの現場ではAIDAを利用されることが多いようです。
AIDCA(アイドカ)
AIDCAは消費者購買行動モデルの1つです。
AIDMAはAttention(注意)→Interest(興味)→Desire(渇望)→Conviction(確信)→Action(購買)
AIDAの提唱者であるE・K・ストロングが、AIDAに確信を加え修正したものとされています。
DECAX(デキャックス)
DECAXはコンテンツマーケティングの現場で利用される消費者行動モデルです。
DECAXはDiscovery(発見)→Engage(関係)→Check(確認)→Action(購買)→Experience(体験と共有)
こちらのモデルはコンテンツマーケティングにおける概念で、その特徴はDiscovery(発見)とExperience(共有)です。
企業側から宣伝広告を行うのではなく、消費者から発見をしてもらい、コンテンツを経て企業との関係性を構築するという流れになっています。
AISCEAS(アイシーズ)
AISCEASは、AISASをより詳細にした購買行動モデルです。
「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」の2つが加わっています。
Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Comparison(比較)→Examination(検討)→Action(購買)→Share(共有)のぞれぞれの頭文字を取っています。
AIDEES(アイデス)
AIDEESは元東京大学大学院経済学研究科教授の片平秀貴氏が提唱した消費者購買行動モデルです。
AIDMAの購買行動後に着目したモデルになっています。
Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(渇望)→Experience(経験)→Enthusiasm(熱狂)→Share(推奨)
このモデルは、AIDMAとAIDまで同じ工程を辿りますが、ActionがExperienceに代わっています。
これは消費者にとって購買行動の目的は商品やサービスを「使用/経験する」ことにあると考えたためであると言われている。
結果、Share(推奨)ののちには、別の消費者をDesire(渇望)にするというモデルになっています。
SIPS(シップス)
SIPSはソーシャルメディアの普及を背景に提唱された消費行動モデルです。
電通の「サトナオ・オープン・ラボ」(電通モダン・コミュニケーション・ラボ)が2011年に提唱しました。
Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate(参加)→Share&Spread(共有・拡散)という流れであり、これらは購買行動ではなくソーシャルメディア上の消費行動に着目しているモデルになっています。
AMTUL(アムツール)
AMTULは購買行動モデルにおいて、マーケティングコミュニケーションの定量目標を達成できたかのどうかの評価と結びつけることを目的としたものです。
AMTULはAwareness(認知)→Memory(記憶)→Trial(使用)→Usage(本格的使用)→Loyalty(ブランド固定)というプロセスを辿ります。
Awareness(認知させる):再認知名率*
Memory(記憶させる):再生知名率*
Trial(試験的に使う):使用経験率
Usage(頻繁に使う):主使用率
Loyalty(ブランド名を決める):今後の購買意向率
これら各段階を定量的に把握することを主目的としているモデルです。
再認知名率とは、ブランド名を与えることで製品として認知できる割合のことです。
再生知名率とは、ブランド名を記憶していて、助けを借りずにブランド名をあげることができる割合のことです。
RsEsPs(レップス)
RsEsPsは、一般社団法人日本プロモーショナル・マーケティング協会が2019年6月に提唱した最新の購買行動モデルです。
RsEsPsは、Recognition(認識フェーズ)→Experience(体験フェーズ)→Purchase(購買フェーズ)→Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)の4つのフェーズから構成されています。
RsEsPsの最大の特徴は、『検索・共有・拡散』です。
消費者が、商品やサービスを認識したあとに、その商品やサービスを体験して、購入に至るという流れは従来の購買行動モデルと大きくは変わりません。
しかし、RsEsPsでは、3つのフェーズそれぞれで『検索・共有・拡散』される可能性があるとされています。
スマートフォンやSNSが普及し、いつでもどこでも検索・共有・拡散がおこなわれる実態を反映したモデルがRsEsPsだということです。
【まとめ】AIDMAはまだ使える!顧客の購買行動を把握して効果的なマーケティングを
顧客の購買行動を5つのフェーズで表したAIDMA。
AIDMAの活用で、顧客の購買行動とマーケティング施策の対応関係が明らかになります。
結果として、顧客の心理状態に合わせた適切なマーケティング活動が可能になるでしょう。
最近では、AIDMAはもう古いといわれることもありますが、実際には今でも有効なモデルです。
なぜなら、AIDMAは顧客の購買行動の本質を捉えており、得意とするケースも存在しているためです。
AIDMAで顧客の購買行動を理解して、より効果的なマーケティング活動をおこないましょう。
ぜひAIDMAを活用してみてください。