目次
4Pとは
伝統的に用いられるマーケティング・ミックスの要素のことで、マーケティングミックスは標的市場において戦略通りの反応を引き出し、売上に影響を与えるために企業が使用するコントロール可能なツールの組み合わせのことです。
これらは
- 「Product:製品」
- 「Price:価格」
- 「Place:流通」
- 「Promotion:プロモーション」
の4つの単語の頭文字からとられています。
4Pを実施するにあたっての留意点
マーケティング戦略を考える上で、4Pからはじめてしまっては意味がありません。
マーケティングのプロセスは「事業環境分析」「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」「マーケティングミックスの策定」と順をおって行なっていく必要があります。
事業環境分析
事業環境分析における外部環境分析では、マクロ環境分析とミクロ環境分析にわかれます。
外から内へを基本にマクロからミクロへ分析を行なっていくことが基本になります。
マクロ環境分析
マクロ環境分析で有名なものはPEST分析です。
- 「Political Environment:政治法律」
- 「Economic Environment:経済」
- 「Social Environment:社会」
- 「Technological Envionment:技術」
の4つの観点から、自社ではコントロールできないマクロ的な要因を調査します。
PEST分析と重複することになりますが「人口動態」「経済」「政治」「文化」「技術」など、企業がコントロールできない環境をマクロ環境と呼びます。
ミクロ環境分析
ミクロ環境分析では、企業と密接に関わる環境要因を分析します。
代表的なものは大前研一が提唱した戦略的3Cです。
「Consumer:顧客市場」「Competitor:競合」「Company:自社」の3つを分析することで業界における成功の鍵であるKSF(Key Success Factor)を見つけ出します。
この場合「Consumer:顧客市場」「Competitor:競合」は外部ミクロ環境分析であり「Company:自社」は内部要因分析になります。
また、業界での脅威を把握し収益性を分析する目的としては、マイケルポーターが提唱した「ファイブフォース理論」を用いることもあります。
ファイブフォース理論では「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」をそれぞれ分析することで、業界における収益性を決定づける要因をチェックする際に用いられます。
自社の強み、弱みを分析する際にはVRIO分析を用いることもあります。
VRIO分析は「Value:経済的価値」「Rarity:希少性」「Imitability:模倣可能性」「Organization:組織」の4つの項目をVRIOの順にYes or Noでチェックを入れ、自社の強み、あるいは弱みを明確にするものです。
SWOT分析
PEST分析や3C分析で、マクロ環境やミクロ環境を分析したのちに、SWOT分析を用いて事実に対する解釈を加えます。
SWOT分析とは事業環境を
- 「Strengths:強み」
- 「Weaknesses:弱み」
- 「Opportunities:機会」
- 「Threats:脅威」
という4つのカテゴリに分類することで、戦略の策定を行う際に用いられる事業環境分析フレームワークの1つです。
「内部要因」か「外部要因」を縦軸に「好ましい傾向:プラス要因」か「好ましくない傾向:マイナス要因」を横軸にして四象限のマトリックスに分類するかたちになります。
そして「強みと機会」「強みと脅威」「弱みと機会」「弱みと脅威」を掛け合わせてることで、自社がとるべき行動を明確にしていきます。
自社がとるべき戦略を明確にすることで、自社のリソースで事業展開するべき市場を決定していきます。
STP分析
STP分析は「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の順番で行います。
市場を細分化(セグメンテーション)し、標的市場を決定(Targeting)し市場でのポジショニング(Positioning)を決定します。
市場の細分化は「地理的変数」「人口動態変数」「心理的変数」「行動変数」などを用いて分類を行います。
市場の細分化や分類を行った後は、各市場セグメントの魅力を評価し、参入するセグメントを決定します。
市場の決定の際には6R
- 「Realistic Scale(市場規模)」
- 「Rate of Growth(成長性)」
- 「Rival(競合状況)」
- 「Rank&Ripple Effect(優先順位と波及効果)」
- 「Reach(到達可能か)」
- 「Responce(反応の測定は可能か)」
などの項目も確認しておくとよいでしょう。
また参入するセグメントを決定した後に、どのようなポジションを獲得したいのかを決定します。
ポジションとは、競合他社の製品と比較された自社の製品が、消費者の心の中で占める場所のことです。
競合製品と差別化を図ることによってブランドパーソナリティが構成され、認知の拡大に寄与することになります。
マーケティング・ミックスの策定と4P
事業環境分析からSTP分析を経て、ようやくマーケティング・ミックスいわゆる4Pの策定を行います。
なぜこのプロセスを経るのかというと、標的市場により適切なマーケティング・ミックスは異なること、自社にとって魅力的な標的市場を選択することで、自社の目的とする利益を獲得できるからということになります。
4Pはそれぞれ
- 「Product:製品」
- 「Price:価格」
- 「Place:流通」
- 「Promotion:プロモーション」
の4つの単語の頭文字からとられています。
Product:製品
製品とは企業がその標的市場に提供するサービスと財のことです。
製品においては
- 「製品の多様性」
- 「品質」
- 「スタイル」
- 「デザイン」
- 「特徴」
- 「ブランド名」
- 「パッケージ」
- 「サイズ」
- 「アフターサービス」
- 「購入後の保証」
- 「返品規定」
などが当てはまります。
製品は「コア」「形態」「付随機能」に分類されます。
「コア」とは顧客の本質的なニーズを満たす機能のことです。
「形態」とは製品のコアに付随するパッケージや品質、ブランド名、製品特性、製品の多様性、サイズ、などがあてはまります。
「付随機能」とは製品の「コア」と「形態」以外の顧客が価値を認める付加的な機能のことです。「アフターサービス」「購入後の保証」「返品規定」などが当てはまります。
また製品はさまざまな形で分類が可能になります。
それぞれの特徴を把握しておくことでマーケティング・ミックスの策定に役に立ちます。
①耐久財か非耐久財かサービスか:物理特性による分類
耐久財とは、使用期間も長く1個あたりの価格も高く販売個数が少ないもので、例えば「車」「コンピューター」「衣服」などがこれにあたります。
耐久財の場合は、人的販売であったり製品保証、アフターサービスなどの付加的な機能が重要になり、それらにかかるコストを鑑みてPrice:価格を設定する必要があります。
非耐久財とは、使用期間が短く、使用回数、販売個数も多い商品です。
例えば「飲料」「化粧品」「洗剤」「トイレットペーパー」などがこれにあたります。
これらは初回購入とリピート率が重要になり、店頭マーケティングやマス・マーケティングなどが重要な施策となっています。
店頭マーケティングではP&Gが提唱したFMOTが有名です。
サービスは、無形の製品であり「機能」を提供するものです。
例えば「ホテル」「人材サービス」「航空」などがあげられます。
生産の場と販売の場と消費の場が同一になることが多い点や、返品などが効かないという特性もあります。
形がない分、サービス提供側の信頼性の重要度は高くなる傾向にあります。
スカンジナビア航空の再建で有名なヤン・カールソンは「真実の瞬間:Moment Of Truth」という概念を提唱し、無形サービス提供時の顧客との接点、つまりサービスの消費の現場においての企業の対応の質の向上を徹底しました。
信頼の獲得ができれば、長期的に収益を獲得できる可能性が向上するのがサービスとなります。
②消費財か生産材か:使用目的による分類
消費財とは、個人の消費を目的として提供される製品のことになります。
例えば、「食品」「洗剤」「衣料品」「化粧品」「トイレタリー製品」などがこれにあたります。
マスマーケティングや、店頭マーケティングが中心になります。
生産材とは、対企業や対政府などのtoBでのビジネスが対象となります。
生産材であればBtoBでの取引で、人的販売が有効な手段になることが多いです。
③最寄品か買回品か専門品か:購買行動による分類
最寄品(Convinience goods)とは、消費者がすぐに購入できる、特に苦労をしなくても購入ができる商品のことです。
一般的には製品の価格は安価であり、最寄の店で購入されることが多い製品です。
これらは消費者が製品をすぐに購入できるような機会を確保することが重要になります。
なるべく多くの小売店に陳列をしてもらうことが重要になる製品です。
買回品とは
いくつかの製品を比較検討を十分にした上で購入する商品のことです。
購買計画を立てて購入されるタイプの商品です。
例えば、「家具」「衣料品」「家電製品」などがこれにあたります。
購買頻度は低く、価格は高価であることが多いです。
マスマーケティングとの相性はあまりよくなく、個人個人に合わせたプロモーション戦略が求められる商品になります。
専門品とは
購入にあたって特別な知識や趣味性を持ち、高級というステータスになるような製品は基本的に専門品に分類されます。
例えば高級ブランド製品や高級車などがそれらにあたります。
一般的には製品の単価は高価であり、販売する店舗などのチャネルは限られていることが多いです。
専門品としての競争力を保つためには、ブランドの構築や維持を最優先にするマーケティング活動が求められます。
このように製品の特性によって、とるべきマーケティング施策がまったく異なることが理解できると思います。
Price:価格
価格には、商品そのものの価格に加えて、支払いフローや、支払い方法、リベート、値引き、アロ―ワンスなども含まれます。
価格設定は、企業が直接得られる収益も変化し、競合企業の価格にも影響を与えるものであり非常に重要な意思決定のポイントとなります。
価格は「カスタマーバリュー」「製造コスト」「損益分岐点」などから大枠が決定され「市場における競争環境」や「需要と供給の関係」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」などに影響されます。
Place:流通
市場に製品を流通させるための経路、もしくは販売する場所のことをさします。
チャネルや、流通範囲、品揃え、立地、在庫、輸送、ロジスティクスなどをさします。
Promotion:プロモーション
広告、人的販売、販売促進、PR(Public Relations)、口コミがプロモーションにあたります。
また、これらの4つのPは整合性をとることが重要です。
4つのPはそれぞれ相互に影響をしあっているため、最適な組み合わせを考えトータルな視点を持つと良いでしょう。
4Cとの関係性
4Pと相互の関係にあるものとして4Cという概念があります。
4Cとは、マーケティング・ミックスの要素である4Pを顧客視点で捉えたものになります。
- Product:製品⇄Customer Value:顧客価値
- Price:価格⇄Cost:コスト
- Place:流通⇄Convnience:利便性
- Promotion:プロモーション⇄Communication:コミュニケーション
4Cは4Pが提唱されてから30年以上後の1990年代にロバート・ラウターボーンという学者が提唱した4Pに対応した新しい概念のことで「マーケットイン」の発想をもとに提唱されました。
4Pでは販売者側の視点に立っていることから「プロダクトアウト」の発想であり、顧客視点の発想が必要であるとの背景から提唱されたものになっています。