「ニーズとウォンツの違いがはっきりしない。」
「消費者のニーズを把握するのが大事と言われるけど、どうやったらわかるの?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか?
ニーズとは、消費者が生活のなかで何かしらの『必要性』を感じている状態のことです。
マーケティング成功のカギは、消費者のニーズを満たしてあげるところにあるといっても過言ではありません。
しかし、ビジネスの場面で日常的に聞く言葉だけあって、
「いまさら一緒に使われるウォンツやシーズとの違いを聞くことなんてできない…」
という悩みを持つ方も多いかもしれませんね。
そこで今回は、以下の内容について解説します。
- ニーズ・ウォンツ・シーズの基本的意味と違い
- ニーズを把握すべき理由
- ニーズを把握する方法
「ニーズとウォンツの違いが知りたい!」
「消費者のニーズを把握して、効果的なマーケティング活動をおこないたい!」
このように考えている方は、ぜひ本記事でニーズについて理解を深めておきましょう。
目次
ニーズとは?
ニーズ(needs)とは、人間生活上必要な、ある充足感が奪われている状態のこと、とアメリカの経営学者フィリップ・コトラーは定義しています。
消費者が生活の中で感じる『必要性』といいかえるとわかりやすいかもしれません。
日常生活を送る中で、私たちはさまざまなニーズを抱きます。
たとえば、のどが渇くと『のどを潤してくれるモノ』の『必要性』を感じますよね?
このように、消費者が何かしらの必要性を感じているときには、ニーズが生じています。
マーケティング活動において、ニーズがよく活用されるのは、
- 市場・消費者のグループ分け(セグメンテーション)
- 商品開発
といった場面です。
消費者のニーズを正確に把握した上で、このようなマーケティング活動に取り組むことで、以下のようなメリットが得られます。
- 消費者の満足度が高まる
- アプローチの選択肢が増える
- 競合と差別化を図れる
詳細については、本記事の『消費者のニーズを把握すべき3つの理由』を参照してください。
また、ニーズには2種類あります。
消費者が自覚しているかどうかという基準から、次の2種類に分けられます。
- 顕在ニーズ
- 潜在ニーズ
ニーズの種類1.顕在ニーズ
消費者自身が気づいている・自覚しているニーズを、顕在ニーズといいます。
たとえば、あなたが英会話教室に通い始める状況を、イメージしてみてください。
英会話教室に通う理由は、おそらく「英語が話せるようになりたいから」ですよね?
つまり、あなたは「英語が話せるようになる必要性」を自覚して、英会話教室に通い始めるわけです。
こういった、消費者が自覚しているニーズを、顕在ニーズといいます。
ニーズの種類2.潜在ニーズ
その一方で、消費者が自分自身のニーズにまだ気づいていない場合もあります。
このように、まだ消費者の意識にないニーズは、潜在ニーズとよばれます。
もう一度、英会話教室の例で考えてみましょう。
英会話教室に通うあなたは、「英語が話せるようになりたい」という顕在ニーズを持っています。
この顕在ニーズをさらに突きつめていくと、より本質的で、意識していなかったニーズが出てくることがあります。
たとえば、このケースでは「友達や恋人にかっこいいと思われたい」という気持ちが根本にあるかもしれません。
こういった、消費者が自覚していないニーズを、潜在ニーズといいます。
ウォンツとは?
ニーズと混同されやすいマーケティング用語のひとつに、ウォンツがあります。
ウォンツ(wants)とは、ニーズを満たしてくれるモノが欲しい、という具体的な『欲求』のことを指します。
たとえば、私たちはのどの乾きを感じたとき、「水が飲みたい!」というような欲求を持ちますよね?
このとき、水分が不足している状態を解消するために、特定のモノ=水を欲しているわけです。
こうした、あるニーズを満たすために特定のモノが欲しくなる状態を、ウォンツとよびます。
ウォンツには、以下の3種類があります。
- 基本ウォンツ
- 条件ウォンツ
- 期待ウォンツ
ウォンツの種類1.基本ウォンツ
基本ウォンツとは、具体的解決を求める欲求です。
「のどが渇いた」というニーズに対して、「水が飲みたい」という欲求が基本ウォンツにあたります。
ウォンツの種類2.条件ウォンツ
条件ウォンツとは、解決する手段を選ぶための条件や指標です。
「のどが渇いた」というニーズに対して、単に水を求めるのではなく、「冷たいミネラルウォーターが飲みたい」という条件を設定する場合、その欲求は条件ウォンツになります。
ウォンツの種類3.期待ウォンツ
期待ウォンツとは、満たされて当たり前という基準です。
「のどが渇いて」スーパーで水を購入した場合、私たちは「市販の水は安心・安全」という期待ウォンツを持っていたと考えられます。
【事例付き】ニーズとウォンツの違い:目的か手段か
「でもやっぱりニーズとウォンツの違いがはっきりしない…」
という方もいるかもしれません。
実際、ニーズとウォンツは混同されがちです。
そんな方は、次のように考えるようにしてください。
- ニーズ=『目的』
- ウォンツ=『手段』
突然ですが、次の言葉をご存知でしょうか?
「ドリルを買いに来た人がほしいのは、ドリルではなく穴である」
これは、セオドア・レビット教授(元ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授)が、自身の著書『マーケティング発想法』の中で引用した言葉です。
実は、ここにニーズとウォンツの関係性がわかりやすく表わされています。
このシチュエーションでは、穴がニーズ(目的)、ドリルがウォンツ(手段)にあたります。
消費者の「ドリルが欲しい」という気持ちは、「穴をあけたい」から生じていますよね?
つまり、この消費者は「穴をあける」という目的のために、ドリルを手段として選択したに過ぎず、穴があくならドリルじゃなくてもいいわけです。
このように、ニーズとウォンツの関係性は、目的と手段で捉えることが可能です。
下記の例を見れば、両者の違いや関係性がよりイメージしやすくなるかと思います。
人物 | ニーズ=目的 | ウォンツ=手段 |
お腹が空いている人 | おいしいもので空腹を満たしたい | 寿司が食べたい |
忙しい主婦 | 掃除の時間を節約したい | お掃除ロボットが欲しい |
仕事で英語が必要になったサラリーマン | 英語を話せるようになりたい | オンライン英会話を始めたい |
シーズとは?
マーケティングにおいて、もうひとつよくニーズと対比して用いられている概念があります。
それが、シーズです。
シーズ(seeds)とは、英語で『種』を意味し、企業が持つ独自の技術やノウハウ、アイディアや材料のことを指します。
シーズは、『シーズ志向』という言葉で、よく『ニーズ志向』と比較されます。
両者の違いは、誰の視点から商品・サービスを作っていくのか、という点にあります。
それでは、ニーズ志向とシーズ志向の特徴について、少し詳しく見ていきましょう。
ニーズ志向
ニーズ志向とは、消費者視点で商品やサービスを提供していくスタイルのこと。
ニーズ志向では、市場・消費者の求めていることを追求し、そのニーズに応じた商品開発をします。
ニーズ志向で商品開発をおこなった場合、すでに消費者・市場のニーズが存在しているため、一定の需要と売上が期待できるという特徴があります。
シーズ志向
シーズ志向とは、生産者視点で商品やサービスを提供していくスタイルのこと。
企業独自の技術やアイディアをもとに、「こんなものを作りたい」という生産者視点で商品開発をおこないます。
新たな市場の開拓・新たな価値の提供を目指す場合には、シーズ志向での商品開発が適しています。
消費者のニーズを把握すべき3つの理由
「消費者のニーズを正確に把握することが重要だ」
マーケティングに携わっていると、よくこのような言葉を聞くのではないでしょうか?
しかしなぜ、ニーズの把握はこれほど重要視されるのでしょう?
ここからはその理由について解説していきます。
- 消費者の満足度が高まる
- アプローチの選択肢が増える
- 競合と差別化を図れる
消費者のニーズを把握すべき理由1.
消費者の満足度が高まる
消費者が日常的に感じているニーズを正確に把握できれば、消費者それぞれの満足度を高めることができます。
というのも、消費者の求めることを商品に反映できるからです。
ニーズに応えた商品というのは、消費者からすると、かゆいところに手が届いているような感覚ですよね。
たとえば、缶コーヒー。
昔は190mlのプルタブ式しかありませんでした。
しかし最近では、主流がボトル缶タイプやペットボトルタイプにシフトしていますよね?
ここには、「仕事中時間をかけて飲み続けたい」、「出勤時に購入して一日中持ち歩きたい」といった消費者のニーズが反映されているのです。
ニーズに応えた商品開発の結果として、実際に消費者の満足度は上がり、ボトルコーヒー市場の規模も大きくなっています。
このように、消費者に「こんな商品が欲しかったんだよね!」と満足してもらえるような商品を生み出すには、消費者のニーズを把握することが前提となってきます。
消費者のニーズを把握すべき理由2.
アプローチの選択肢が増える
消費者の根本的なニーズを把握すると、さまざまな選択肢が検討できるようになります。
もう一度、ドリルを買いに来たお客さんの例で考えてみましょう。
ドリルを買いに来たお客さんのニーズは、「ドリルがほしい」ではなく「穴をあけたい」です。
もしこのニーズを見抜けなかった場合、選択肢はドリルを売ることに限定されてしまいます。
一方、ニーズを理解していた場合、ドリル以外の穴をあける手段も提案可能です。
たとえば、大工さんを派遣する、キリを売る、というのもアプローチのひとつとして想定することができますよね?
さらに深いところまでニーズを掘り下げていくと、そのお客さんが穴をあけたいのは、本棚を作りたいからかもしれません。
その場合、本棚自体を提供することも選択肢としてあがってくるわけです。
このように、本質的ニーズを探っていけば、消費者にアプローチする選択肢が広がっていきます。
消費者のニーズを把握すべき理由3.
競合と差別化を図れる
モノが溢れている現代において、競合との差別化を図るには、消費者の顕在ニーズだけではなく、潜在ニーズを満たすことが必要です。
というのも、顕在ニーズしか満たせない商品は、競合との違いを生み出せず、価格競争に陥ってしまうからです。
同じような商品が隣に並んででいると、どうしても安い方を買ってしまいますよね?
そのため、競合と差別化を図るには、まだ消費者も気づいていない潜在ニーズをいち早く発見し、市場に新たな価値を提供する必要があるのです。
たとえば、Apple社がAirPodsを発売して以来、ワイヤレスイヤホンの使用が急速に広がりましたよね?
ワイヤレスイヤホンを開発したApple社は潜在的に存在していた「イヤホンのコードが煩わしい」という不満=ニーズを解決することで、競合に差をつけたのです。
このように、潜在ニーズを発見できれば、競合と差をつけることが可能になります。
消費者のニーズを把握する3つの方法
では、実際に消費者のニーズを把握するにはどうすればいいのでしょうか?
ここからは、消費者のニーズを把握する3つの方法を紹介します。
- インタビュー
- 行動観察
- ヒット商品の分析
消費者のニーズを把握する方法1.インタビュー
消費者のニーズを把握するには、消費者と直接コミュニケーションをとって、生の声を集めるのが一番です。
したがって、インタビューは、ニーズを把握する有効な手段になります。
一方で、インタビューで消費者から本音やリアルを引き出せるかどうかは、インタビューアーの質問の仕方や内容にかかっているため、一定のスキルが求められます。
インタビューの際には、たとえば以下のようなことを尋ねましょう。
- 消費者が日常的に感じている不便・不具合
- 最近の興味
- 自社商品の評価
- 現在欲しいと思っているモノ(ウォンツ)
そして、消費者が自覚していない潜在ニーズまでたどり着くために、さらに質問を繰り返してください。
消費者:「タブレットがほしい思っています。」(ウォンツ)
あなた:「タブレットを買うと、あなたにはどんな良いことがあるんですか?」
消費者:「移動中に映画を見たり、本を読んだりできるようになります。」(ニーズ)
あなた:「どうして移動中に使用したいんですか?」
消費者:「映画鑑賞や読書が趣味なんですが、そのための時間が作れないので、移動時間を趣味に使いたいんです。」(ニーズ)
このケースでは、『移動時間を趣味の時間に変えてくれるモノ』に消費者のニーズがあるとわかりました。
このように消費者に「なぜ?」を繰り返していくことで、より本質的なニーズに迫っていくことが可能になります。
消費者のニーズを把握する方法2.行動観察
消費者のニーズが生まれるのは、常に現場です。
したがって行動観察も、消費者のニーズを把握する有効な手段となります。
行動観察は生活の中で、消費者がどのような行動をとっているかを観察することによって、その裏にある潜在ニーズを探ろうとするものです。
通常、消費者の自宅を直接訪問したり、商品を使用している様子を録画したりして、観察がおこなわれます。
日常生活の中で、私たち消費者はいちいち自分の行動の意味を考えたりしません。
つまり、無意識な行動や当たり前におこなっていることが、たくさんあるということです。
しかし、無意識・無自覚な行動パターンにこそ、消費者自身がまだ気づいていない・言語化できていない潜在ニーズが潜んでいる可能性があります。
行動観察で消費者の潜在ニーズを見つけた事例として有名なのは、食料品ブランドHEINZ(ハインツ)社の、逆さボトル式ケチャップです。
HEINZ社の調査員が、消費者の生活に密着した際に目にしたのは、消費者が残り少なくなったケチャップの容器を逆さまにし、底を叩いている様子でした。
また、多くの消費者が、ケチャップを逆さにして冷蔵庫で保存していることがわかりました。
そこでHEINZ社は、逆さの状態で保存できるケチャップ容器のニーズを見いだし、商品開発に活かしたわけです。
このように行動観察は、消費者の潜在ニーズを把握するのに役立ちます。
消費者のニーズを把握する方法3.ヒット商品の分析
消費者が今、どのような商品・サービスに必要性を感じているのかを知りたい場合、ヒット商品・サービスを分析してみるのも、方法のひとつです。
売れている商品に目を向けてみると、共通点として消費者のニーズが見えてきます。
たとえば、2018年頃からチーズハットグやタピオカが、学生を中心に大ヒットしていますよね?
これらの商品の共通点は何でしょうか?
おいしさはもちろんですが、大きな共通点は『インスタ映え』です。
チーズハットグやタピオカ以外にも、最近ではこのインスタ映えのニーズを満たしてヒットしている商品は多いですよね?
ここから、今の若い世代、特に学生には、「SNSで素敵な写真を投稿・共有したい」というニーズがあることがわかります。
このようにして、すでにヒットしている商品を分析することも、消費者のニーズを把握する手段になります。
【まとめ】ニーズを把握してマーケティングに活かそう!
マーケティングが目指すのは、売れる仕組みを作ることです。
商品が自然と売れる状況をつくるためには、消費者が感じている必要性、すなわちニーズを満たす商品を市場に送り込まなくてはなりません。
もちろん、顕在化しているウォンツを把握することも重要ですが、ウォンツの源となっているニーズを把握しておくことで、次のようなメリットが生まれます。
- 消費者の満足度が高まる
- アプローチの選択肢が増える
- 競合と差別化を図れる
今回紹介した方法を参考に、ぜひ消費者のニーズを把握し、マーケティング活動に活かしてください。