ビジネスシーンで広く使われるフレームワークのひとつ『SWOT分析』。
「どのような目的で」「どのように用いる」のかきちんと理解されていますか?
SWOT分析は、自社の現状を把握したり、事業計画を立てる際に効果的なツールです。
しかし「いざSWOT分析を使ってみるとなると、やり方がわからない」とお悩みの方も多いでしょう。
そこで今回は、以下の5つのトピックをメインに解説します。
- SWOT分析の目的と使用場面
- SWOT分析のポイント
- SWOT分析のやり方
- SWOT分析の例
- クロスSWOT分析
この記事を読むことでSWOT分析への理解が深まり、成果につながる効果的な分析ができるようになります。
「あらためてSWOT分析について詳しく知りたい」
「SWOT分析を使って現状分析・戦略立案がしたい」
という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
SWOT分析とは
SWOT(スウォット)分析とは、次の4要素を分析するためのビジネスフレームワークです。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
SWOT分析という名前は、これら4つの英単語の頭文字をとって命名されました。
市場や経済の動向といった「外部環境」と、自社の持つ資産や資源といった「内部環境」を「プラス要因」「マイナス要因」に分けることで、4つのカテゴリが生じます。
3C分析やPEST分析といったフレームワークが事実のみをまとめるのに対し、SWOT分析ではその事実が自社にとって「プラス」か「マイナス」かという基準で解釈を加える特徴があります。
- 強み:目標達成に貢献する、他社と比較して有利な自社の特徴や資産。「得意なこと」や「ユーザーに選ばれている理由」。
- 弱み:目標達成の障害となる自社の特徴や資産。「苦手なこと」や「競合と比較して劣っている部分」。
- 機会:目標達成に貢献しうる、外部の環境要因。市場・社会・競合などの変化のうち、自社にとってチャンスになりうるもの。
- 脅威:目標達成を阻む恐れのある、外部の環境要因。市場・社会・競合などの変化のうち、自社にとってリスクになりうるもの。
ではこのSWOT分析というフレームワーク。
何を目的に・どのような場面で用いられるかご存知でしょうか?
適切な場面でしっかりとした目的意識のもとSWOT分析を実施するために、ぜひ次の章を確認しておきましょう。
SWOT分析の目的と使用場面
SWOT分析は、目標や目的を達成するために現状を把握し、戦略を立てるために使用されます。
みなさんご存知のとおり、ビジネスでは意思決定の際に、あらゆる要素を考慮しなければなりません。
なぜなら会社が利用できるヒト・モノ・カネといったリソースには限りがあるためです。
また大きな損失を避け、チャンスを獲得するためには、市場や消費者の動きに注意する必要があります。
SWOT分析を使うと、意思決定に関わるすべての要素を、自社にとって好ましい要因と好ましくない要因に分けて把握できます。
結果として、次に取るべきアクションをより適切に見極められるのです。
そのため、SWOT分析は主に以下のようなシーンにおいてよく利用されます。
- 会社や各プロジェクトの現状評価・改善・課題解決
- マーケティングプランや経営戦略の策定
- 商談時にクライアントとの認識すり合わせ
- 何らかのアクションを起こす前
SWOT分析はビジネスにおいて非常に有効なツールですが、効果的な分析をするにはいくつか抑えておかなければならないポイントがあります。
次の章でSWOT分析をおこなう上でのポイントを解説しますので、「価値ある分析がしたい」という方はぜひこちらも確認しておきましょう。
SWOT分析のポイント
以下の3つのポイントを意識することで、より効果的にSWOT分析を進めることができます。
- 事前に目的を明確にする
- さまざまな職種や属性のメンバーでおこなう
- 内部要因と外部要因を区別する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
SWOT分析のポイント1.事前に目的を明確にする
「なぜ分析をおこなうのか」という目的を明確にせず、なんとなくSWOT分析を実施しても、良い結果には結びつきません。
SWOT分析は特定の目的を達成するために使用するフレームワークです。
たとえば「『〇〇(商品名)』の売上を拡大したい。だから戦略を立てるためにSWOT分析をおこなう」など、できる限り具体的な目的を決めたうえで分析に入る必要があります。
目指すべきゴールがはっきりしない状態で分析をすると、議論の内容や本質にブレが生じ、結果的に「無意味なものになってしまった」ということにもなりかねません。
必ず「今回のSWOT分析によって、最終的にどのような意思決定や戦略策定をしたいのか?」という目的を決め、チーム内で事前に共有しておきましょう。
SWOT分析のポイント2.
さまざまな職種や属性のメンバーでおこなう
SWOT分析をおこなう際には、経営層・マーケター・営業・エンジニアなど、目的にあわせてさまざまな職種や属性のメンバーを集めましょう。
これは一部のメンバーのみで分析を進めることにより意見やアイデアに偏りが生じてしまうのを防ぐためです。
また議論を進める場合には、いきなり全員で話し合うのではなく、まずは各個人で付箋などにアイデアを書き出す時間を設けましょう。
このようなスタイルを取ることで「集団的な考え」に陥ることなく、集まったメンバーそれぞれの考えをもれなく拾うことができ、多様な視点を分析に反映させることが可能になります。
書き出してもらった各メンバーの意見は、その後の話し合いの中でグルーピングしたり、新たなアイデアに発展させながらまとめていくと良いでしょう。
SWOT分析のポイント3.
内部要因と外部要因を区別する
SWOT分析では内部要因と外部要因をしっかりと区別しましょう。
よく内部要因の「強み」と、外部要因の「機会」を混同してしまうケースがあるので注意が必要です。
違いは「その要因を自分たちでコントロールできるかどうか」。
内部要因は自分たちの努力次第で変えられるのに対し、外部要因は自分たちの力では変えられません。
4つの要素を内部要因と外部要因に分けると下記のようになります。
- 内部要因(コントロールできる):強み、弱み
- 外部要因(コントロールできない):機会、脅威
ここまでを読んだ方は、SWOT分析をおこなう際のポイントについてもご理解いただけたと思います。
では実際にSWOT分析をおこなうときに、どのような手順で進めていけばよいのか、を次の章で解説します。
SWOT分析と組み合わせてよく利用されるフレームワークもご紹介しますので、ぜひお読みください。
SWOT分析のやり方
ここからSWOT分析の具体的なやり方について解説します。
通常SWOT分析は以下の3つのステップで実施します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
SWOT分析のやり方1.
外部要因の分析
内部要因は外部要因に左右される可能性があるため、環境分析をおこなうときには基本的に外部→内部という流れでおこないます。
したがってSWOT分析の最初のステップは、自社ではコントロールできない外部の環境要因を収集することです。
たとえば、以下のような外部要因が現状どうなっているのか、それぞれ書き出していきましょう。
また外部要因を集める際には、PEST分析・5フォース分析・3C分析といったフレームワークを活用できます。
ここで3つのフレームワークをご紹介しますので、ぜひ活用してみてください。
外部要因の分析に利用できるフレームワーク:PEST分析
PEST(ペスト)分析は「政治(Political)」「経済(Economical)」「社会(Social)」「技術(Technological)」といった、いわゆるマクロ環境を分析するためのフレームワークです。
4項目の頭文字を取って、PEST分析と呼ばれています。
PEST分析については当サイトの別記事で詳しく解説しています。
PEST分析についてさらに詳しく学びたい方は、ぜひこちらをお読みください。
PEST分析とは
外部要因の分析に利用できるフレームワーク:5フォース分析
5フォース(ファイブフォース)分析は、「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」といった、いわゆるミクロ環境を分析するためのフレームワークです。
5フォース分析という名前は、業界の収益性を決める5つの「 力(force:フォース)」から来ています。
5フォース分析については当サイトの別記事で詳しく解説しています。
5フォース分析についてさらに詳しく学びたい方は、ぜひこちらをお読みください。
5フォース分析とは
外部要因の分析に利用できるフレームワーク:3C分析
3C(サンシー)分析は、3つのC「顧客・市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」を分析するためのフレームワークです。
なお、3つの要素のうち「自社(Company)」については内部要因になります。
3C分析については当サイトの別記事で詳しく解説しています。
3C分析についてさらに詳しく学びたい方は、ぜひこちらをお読みください。
3C分析とは
SWOT分析のやり方2.
内部要因の分析
外部要因の収集ができたら、次は自社でコントロールできる内部の環境要因を収集します。
たとえば、以下のような項目に関して、自社がどのような特徴を持っているのか挙げていきましょう。
- 資金、コスト
- 立地、設備
- 従業員
- 知的財産、技術
- 顧客サービス
- 品質
- ブランド
また内部要因についても、他のフレームワークを活用した分析が可能です。
内部要因の分析には、VRIO分析を使うと良いでしょう。
内部要因の分析に利用できるフレームワーク:VRIO分析
VRIO(ブリオ)分析は、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・組織など)に基づいて、市場競争における自社の強みや弱みを分析するためのフレームワークです。
VRIO分析では、以下の4つの観点から分析をおこないます。
- 経済価値(Value)
- 希少性(Rerity)
- 模倣困難性(Inimitability)
- 組織(Oeganization)
SWOT分析のやり方3.
フレームにまとめる
上記2つのステップで、SWOT分析に必要な外部要因と内部要因の収集・整理ができました。
それでは実際に、各要因をSWOT分析の4つのフレームに当てはめてみてください。
外部環境においてプラスな要因は「機会」、マイナスな要因は「脅威」、内部環境においてプラスな要因は「強み」、マイナスな要因は「弱み」に分類します。
フレームを埋める際には、SWOT分析をおこなう目的にもとづいて、次のような問いかけをすると良いでしょう。
- 活かせる強みは?
- 克服すべき弱みは?
- 利用できる市場機会は?
- 回避すべき脅威は?
なお、このSWOT分析をさらに具体的な施策に落とし込んでいくための『クロスSWOT分析』についてはのちほど解説します。
その前にまずはSWOT分析の具体例を、次の章で確認しておきましょう。
SWOT分析の例
ここでは、SWOT分析の例をご紹介します。
下記の表をご覧ください。
これは、あるパン屋が「新規顧客を増やす戦略」を立てるために、SWOTで現状分析をおこなった例です。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部要因 | 強み
| 弱み
|
外部要因 | 機会
| 脅威
|
このような小規模な店舗の場合であっても、正しい目的と手順でSWOT分析をおこなうことで適切な現状把握ができます。
ただし、フレームが埋まったこの時点では、あくまでも現状分析にしかなりません。
「今後どうしていくべきか」という方向性を定め、具体的な戦略を練っていくためには、『クロスSWOT分析』を活用する必要があります。
次の章で解説するので、こちらもチェックしておきましょう。
クロスSWOT分析で戦略に落とし込もう
クロスSWOT分析は、SWOT分析で集めた情報を戦略に落とし込む際に有効な手法です。
外部要因と内部要因を掛け合わせた以下の4項目について考えることで、SWOT分析から一歩踏み込んだ具体的な戦略を導き出すことが可能になります。
- 「強み×機会」:積極化戦略
強みを活かしていかに機会を最大化できるかを考えます。
- 「強み×脅威」:差別化戦略
強みを活かしていかに脅威を避けるか、もしくは脅威を機会に変えるかを考えます。
- 「弱み×機会」:弱点補強戦略
機会を利用して自社の弱点をいかに補強していくかを考えます。 - 「弱み×脅威」:防衛戦略
弱みと脅威が重なることで生じうる悪影響・損害をいかに回避するか、最小限に抑えるか、を考えます。
SWOT分析のあとにぜひクロスSWOT分析をおこない、目標達成に向けた戦略を立てるようにしましょう。
【まとめ】SWOT分析で事業環境を把握して戦略策定につなげよう
今回はSWOT分析についてお届けしました。
SWOT分析を利用することで、自社の「強み」「弱み」「機会」「脅威」それぞれを可視化し、適切な現状把握・課題解決・戦略策定をすることが可能になります。
SWOT分析を実施する際には、今回ご紹介した他の環境分析フレームワークも活用して「外部要因」、そして「内部要因」の順で分析をおこようにしましょう。
また効果的なSWOT分析をするには、以下のポイントを抑えておく必要があります。
- 事前に目的を明確にする
- さまざまな分野のメンバーでおこなう
- 内部要因と外部要因を区別する
ぜひ戦略策定につながる適切なSWOT分析、クロスSWOT分析をおこない、事業を成功に導きましょう!