「デジタルPR(広報)」という言葉をご存じでしょうか。
2022年頃には日本のSEO業界でも話題となりましたが、意外と知らない方も多いかもしれません。
デジタルPRとは、オンラインメディアを主戦場とするPR活動のことです。
デジタルPRは「PR(広報)」と「SEO」の両領域にまたがった活動であり、オンライン上での自社の存在感・露出度を高めることを目的としています。
具体的な取り組みイメージを一つ共有しておくと、たとえば、
- 役に立つ優れたコンテンツを用意する
- Webメディア編集者や取引先のサイト、プレスリリースなどで、社外関係者に取り上げてもらう
- 被リンク獲得や認知度向上、オンライン上での関係性構築につながる
というような一連の流れです。
簡単にいえば、被リンクの構築を「SEO」の文脈ではなく「PR・広報」の文脈で捉えようというわけです。
昨今のSEOにおいてE-E-A-Tや指名検索など、ブランドがSEOに与える影響が大きくなっていることを踏まえると、これからのSEOにおいてはますます「デジタルPR」の観点が重要になるでしょう。
デジタルPRは、従来の「被リンク依頼メールをテンプレで一斉に送りつける」被リンク営業とは、まったく性質が異なります。
「デジタルPR(広報)」「リンクアーニング」「被リンク営業」「メディアリレーションズ」「メディアプロモート」など表現はさまざまですが、最近ではSEO業界の著名な方々も、この話題に言及することが多くなりました。
被リンク獲得営業はデジタル広報である
被リンク獲得の「リンクアーニング」
やった方がいいってのは分かっているけど、めちゃくちゃ大変
・賛同いただけるサイト探す
・相手にメリットある提案を作る
・相手に配慮しながら提案
・で、リンクも得る「営業」ではなく、対話ベースの「広報」に近い
でも、この積み重ねが後々効いてきそう
— SEO研究チャンネル (@seolabochannel) March 2, 2022
被リンク獲得のあれこれが網羅的にまとめられてた。もはやSEO担当者ではなく被リンク獲得数を目標として追いかける広報部隊がメディアチームには必要なのではと思う。 https://t.co/DnoNT4tNYa
— SEOおたく / LANY (@seootaku) March 5, 2022
実は英語圏では以前から、「PRとSEOの統合チーム」や「被リンク営業専門の代行会社」が存在しており、被リンクに対してアクティブな戦略がとられています。
対して日本のSEO業界では、PR活動と被リンク獲得を結びつけることは、まだまだ一般的ではありません。
しかし昨今のSEOの流れを考慮すれば、日本のSEO業界も今後「デジタルPR」を戦略の一つとして取り入れる流れがやってくるでしょう。
というわけで今回は、これからのSEOに必要な「デジタルPR」の考え方や重要性、具体的な方法について詳しく解説します。
目次
そもそもPRとは
デジタルPRについて理解を深めるためにも、まずは「PR」の意味を確認しておきましょう。
PRはパブリックリレーションズ(Public Relations)の略語です。
「パブリック=公衆」「リレーションズ=関係」なので、「PR」は公衆との良好な関係性を構築・維持する活動を指します。
日本パブリックリレーションズ協会は、PRを次のように定義しています。
パブリックリレーションズ(Public Relations)とは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。
「組織とその組織を取り巻く人間」には、たとえば、消費者や取引先、メディアや行政機関などが含まれます。
このような自社に関わる人たちとのコミュニケーションを通じて、自社の事業を知ってもらい、良好な関係を築いていくことがPRの目標とするところです。
PR担当者はこの目標を達成するために、プレスリリース配信や取材対応、オウンドメディア運用やSNS運用、イベントの開催など、あらゆる業務をおこないます。
「PR」と「広報」は同じ意味で使われることもありますが、PRは双方向の、広報は一方向のコミュニケーションを意味することが多いです。
デジタルPRとは
ではデジタルPRとは何を意味するのでしょうか。
デジタルPRは、オンラインメディアを主戦場とするPR活動です。
従来のPR活動は、新聞やテレビといったオールドメディアでの露出を増やすことが戦略の一つでした。
しかし近年、WebサイトやSNSといったオンラインメディアの影響力が高まったため、「デジタルPR(広報)」という概念が登場したわけです。
英語圏では、デジタルPRとSEOをセットで語ることが多く、デジタルPRは被リンク獲得戦略の一つとしても認知されています。
冒頭でも少しお伝えしましたが、デジタルPRによる被リンク獲得は、以下のような流れです。
- 相手にメリットのある(Webメディアで取り上げたいと思ってもらえるような)良質なコンテンツを作成する
- Webサイトオーナーや編集者、ブロガー、インフルエンサー、ジャーナリストなど、関連するメディアや担当者に取り上げたいと思ってもらえるように提案をする。リレーションシップを構築する。
- 自社情報の露出や被リンクの獲得につなげる
SEOとPRの相乗効果は高い
今日、SEOとPRの相乗効果は高まっています。
以前からSEOとPRには、重なる部分がありましたが、Googleの進化に伴いさらに密接に関連するようになりました。
PRに注力することがSEOにプラスに、SEOに注力することがPRにプラスに働くというわけです。
- PRのSEO効果:メディアに取り上げてもらうことで、被リンク・サイテーション・指名検索が増加。結果として、専門性・権威性・信頼性の向上につながる。
- SEOのPR効果:検索ユーザーに自社の商品やサービスに関する情報を届けられる。メディアの目にとまり、取材につながりやすくなる。
とはいえ、SEO担当者が単独でデジタルPRに取り組み、被リンクの営業をおこなっていく、というのは少し無理があります。
そのため英語圏では、SEOチームとPRチームの統合が進んでいるのです。
OrganicGrowth社のCEOであるKevinCarney 氏が2021年に実施した、SEOとPRの統合に関するアンケートの結果がこちら。
引用元:Research: The integration of SEO and PR – Search Engine Watch
184人の回答者のうち、132人が「SEOとPRの統合チーム」を持っていると回答しました。
これは回答者全体の71%にあたります。
今後は日本においても「SEO」と「PR」を切り分けず、「PR兼被リンク営業チーム」が必要になってくるのではないでしょうか。
SEOチームとPRチームに協力体制があれば、被リンク以外にも、SEOを意識したプレスリリースの配信ができるなど、得られるメリットは大きいでしょう。
SEOでデジタルPR戦略の重要性が高まっている理由
2022年のSEOにおいてデジタルPR戦略の重要性が高まっている理由として、以下の2点が挙げられます。
- 専門性・権威性・信頼性が求められている
- Googleの John Mueller 氏が推奨している
それぞれ解説します。
1.専門性・権威性・信頼性が求められている
あなたが「参考にしたい」と思う情報は、次のうちどちらでしょうか。
- 名前も知らない個人が書いた記事
- その分野の専門家が書き、よく知っている企業がまとめた記事
多くの方が2つ目を選ぶのではないでしょうか。
最近のSEOでは「コンテンツが重要」とよく言われますが、Googleの評価はページの内容だけでは決まりません。
「誰が書いているか」が非常に重要になってきています。
Googleは発信者やWebサイトに「専門性・権威性・信頼性(E-A-T)」を求めるようになっているのです。
特に健康や金融など、検索ユーザーの人生に多大な影響を及ぼしうるジャンルにおいて、この傾向が強いです。
コンテンツの著者情報やサイトの運営者情報、さらには企業・商品・サービスの評判まで、SEOに影響する可能性があります。
デジタルPRに話を戻すと、デジタルPRはただ被リンクを増やす活動ではありません。
本質的にはブランド構築活動なので、専門性・権威性・信頼性を築く作業でもあります。
メディアにリンクを掲載してもらい、自社のことがWeb上で話題になったり、ブランド名で検索されることが増えれば、SEOにも有利に働きます。
かなり泥臭い作業ではありますが、PR活動で専門性・権威性・信頼性を高めることで、長期的にSEOが成功する可能性は非常に高いです。
2.Google の John Mueller 氏が推奨している
実は2021年から、欧米でも「デジタルPR」による被リンク構築が再び注目を浴びています。
その背景には、GoogleのJohn Mueller(ジョン・ミューラー) 氏の発言があります。
とあるデジタルPR担当者とのTwitter上でのやりとりのなかで、Mueller氏は以下のように述べました。
I love some of the things I see from digital pr, it's a shame it often gets bucketed with the spammy kind of link building. It's just as critical as tech SEO, probably more so in many cases.
— 🦙 johnmu.xml (personal) 🦙 (@JohnMu) January 23, 2021
私はデジタルPRから見るいくつかのものが好きです。それはしばしばスパムのようなリンク構築と一緒にバケツに入れられるのは残念です。デジタルPRは、技術的なSEOと同様に重要であり、おそらく多くの場合、より重要です。
少し噛み砕いて説明すると、Mueller氏は「デジタルPRで獲得したリンク」はGoogleが禁止するスパム的なリンク構築には当たらないと、公言しているわけです。
そのうえで、デジタルPRはテクニカルなSEO施策よりも重要な可能性があることを示唆しています。
デジタルPRは、自社の「良いコンテンツ」を知ってもらう活動です。
リンク掲載の決定権は相手にあり、「良い」と感じてもらえてはじめて獲得できるリンクなので、本来の自然なリンク獲得のあり方と言って良いということでしょう。
デジタルPRで被リンクを獲得するには
では、デジタルPRで被リンクを獲得するには、具体的にどのようなアプローチが必要なのでしょうか。
以下の3つの手順を踏みましょう。
- リンクされやすいコンテンツのリサーチ・作成
- 提案先リストの作成
- リンク掲載の提案・働きかけ・関係性の構築
それぞれ解説します。
1.リンクされやすいコンテンツのリサーチ・作成
大前提として、デジタルPRによる被リンク構築は、有益なコンテンツがなければ始まりません。
「役に立つ」「おもしろい!」「ありがたい。」と感じるような、本当に良いコンテンツがあるからこそ、相手も好意的にメディア内でコンテンツを取り上げてくれる可能性が生まれます。
ポイントは「リンクされやすいコンテンツ × 自社が作成できる独自コンテンツ」を探すことです。
まずは競合サイトを見て「リンクされやすいコンテンツ」の傾向を探ってみましょう。
- ahrefsの「Site Explorer」機能で競合ドメインを入力し、被リンクがついているコンテンツを分析する
このとき重要なのは、被リンク元を見て「なぜそのコンテンツに被リンクがついたのか」を考えることです。
他にも、次のような方法でニーズを探るのもおすすめです。
- SNSでいいねやシェアが多いコンテンツを探す
- はてなブックマークでブックマークやコメントの多いコンテンツを探す
「〇〇のとき役に立った!」「記事の〇〇な部分が良い」「〇〇の情報もあったらな」など、コメントからどのようなニーズがあるかを読み取れるはずです。
ただし、競合を真似たありきたりのコンテンツを作成したところで、被リンクは獲得できません。
- 自社の専門性が活かせるトピックは?
- 提供できる独自の価値は?
- リンクを依頼する相手はどんなメリットが得られる?
ここを十分に考えたうえで、コンテンツを作り込むことが重要です。
欧米のSEOでは一般に、
- 調査データ・統計情報
- インフォグラフィック
- あるトピックについて情報を一つに集約した長文コンテンツ
などが、引用されやすく被リンクがつきやすいものとして、よく利用されています。
2.提案先リストの作成
次にスプレッドシートやエクセルに提案先をまとめましょう。
コンテンツに価値を感じてくれそうなサイトオーナーや編集者、ブロガー、業界内のインフルエンサー、関連する企業や団体などを探します。
取引先や既存顧客も例外ではありません。
ここでは、競合サイトの被リンク元を参考にして提案先を探す方法をご紹介します(ahrefsを使用します)。
1.上位表示したいキーワードで検索。
2.上位サイトのURLを、ahrefsの「Link intersect」機能で入力。(「Site Explorer」→ 「被リンクのプロフィール」→「被リンク」でも確認可能です。「Link intersect」を利用すると、自サイトにはなくて競合サイトには共通して付いているリンクを一括で確認できます。)
3.競合サイトがリンクを獲得しているドメインが表示されます。
4.競合サイトの被リンク元をチェック(競合サイトがリンクを獲得しているということは、自サイトのコンテンツにも興味を持ってくれる可能性が高いです)。
5.リンクを掲載してくれそうなリンク元をピックアップ。連絡先も記載しておく。
このときピックアップする連絡先は、編集者やライターさんなどの個人のSNSアカウントやメールアドレスがおすすめです。
お問い合わせフォームや会社の代表の連絡先には、毎日数多くのメッセージが届くため、埋もれたり無視されたりする可能性があるためです。
記事の著者情報欄に、編集者やライターさんの連絡先が記載されていることも多いので、チェックしてみてください。
またリンクの提案に使える時間は無限ではないので、提案先に優先順位をつけておくことも重要です。
- コンテンツに共感してくれそうか?価値を感じてくれそうか?
- 相手にとってリンクを掲載するメリットがあるか?
- 自社のターゲットがよくアクセスするメディアか?
- コンテンツは定期的に公開、更新されているか?
- ドメインの強さはどれくらいか?
このようなポイントもチェックして、リンクしてもらえる確率や優先順位を判断しましょう。
3.関係性の構築とリンク掲載の働きかけ
リンク掲載の働きかけは、メールやSNSのDMなどを利用しておこなうのが一般的です。
しかし、突然知らない人から「リンクして欲しい」というメールを受け取っても、応じない方がほとんどでしょう。
一方で、近しい人からのお願いなら、引き受けたくなるのではないでしょうか。
そのため、まずは日頃から関連する企業やメディア、サイトオーナーと良い関係性を築いておくことが重要です。
つながりを増やし、ブランドになじみを持ってもらうことが、レスポンスの良さにつながります。
関係性を築いたうえで「相手にメリットのある提案」をしましょう。
たとえば、相手のWebサイトにおいて
- 記事内で引用している調査が古くなっている
- 記事内で不足している情報がある
という場合。
自社のコンテンツで、それらの問題が解決できることを提案できれば、相手も喜んでリンクを掲載してくれるでしょう。
上記のメリットはあくまでも一例です。
どのような提案だと相手にメリットがあり、負担をかけることなくリンクを掲載してもらえるか、考えるようにしましょう。
具体的なメールの書き方については、株式会社CINCの平さんのブログが非常に参考になるので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
【SEO】被リンクを増やす「リンクアーニング手法」 – SEO研究チャンネル
ただし、以下の2点には注意してください。
- リンクを強要しない
- 金銭のやり取りをしない
Googleからリンクプログラムと見なされた場合、ペナルティを受けることになるので、きちんとガイドラインも確認しておくようにしましょう。
リンク プログラム | Google 検索セントラル
【まとめ】SEOとデジタルPRの相乗効果は高い!ブランド構築の意識で長期的なSEO成功確率を高めよう
SEOにおける「デジタルPR」の考え方について説明しました。
デジタルPRはインターネット上で、自社の存在感を高めるだけでなく、被リンク獲得戦略としても効果的です。
ブラックハット的な手法で一時的に有効な被リンクを集めるより、デジタルPRでブランド構築をしていくほうが、長期的にSEOや事業を成功させられる確率は高まります。
SEO担当者は、ぜひ今回ご紹介した「デジタルPR」の考え方をベースに、今後の施策を検討してみてください。
SEOの外部施策については、下記の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。
【2023年版】SEO外部対策とは?15のノウハウと重要性を解説 -webma-
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「デジタルPR戦略」により実際に被リンクを獲得した実績もございます。
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株式会社エクスコアのコンテンツディレクター・ライター。
1996年生まれ。大学で言語学専攻を卒業したのち、エクスコアに入社。2020年からオウンドメディア「Webma」の運営に従事し、コンテンツ制作・編集・SEO業務に携わる。累計100記事以上を執筆し、PV数・CV数400%超成長に貢献。